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【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第5回

2017.07.27 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


 日本の国際協力銀行と日本貿易保険が輸出金融を利用せず独自プログラムを利用したのは、ベトナム・ニソン石油精製プロジェクトの場合と同じ理由であったと思われる。つまり、大きな融資金額あるいは保険金額を供与するためである。既述の通り、直接融資については国際協力銀行が単独で50億米ドル供与し、保険についても日本貿易保険が27.5億米ドル供与している。両者で77.5億米ドルに及ぶ。これは8つの輸出信用機関による融資・保険・保証の総額112億米ドルの約7割に当たる。融資総額200億米ドルの約4割に相当する。輸出金融のプログラムではOECDガイドラインの制約があり、これだけ多額の融資や保険は供与できなかったはずである。本案件は日本の国際石油開発帝石が多額の出資をしている案件であり、加えて生産されるLNGの約7割が日本に輸出されることから、日本の産業全般に資する海外事業とみることができる。従って、国際協力銀行や日本貿易保険は独自プログラムを活用して、強力な支援を行ったものであろう。

 2つの実例には、国際協力銀行の投資金融と日本貿易保険の海外事業資金貸付保険の両プログラムが利用されているが、それぞれのプログラムは単独でも用いられている。つまり、国際協力銀行の投資金融だけが用いられて日本貿易保険の海外事業資金貸付保険は用いられていないケース(例えば、インドネシアのIPP案件 [*31] )や、日本貿易保険の海外事業資金貸付保険だけが用いられて国際協力銀行の投資金融は用いられていないケース(例えば、ベトナム関連案件)も存在する。日本の輸出金融では国際協力銀行、日本貿易保険、民間銀行の3者が協働する三位一体のルールがあったが、国際協力銀行の投資金融と日本貿易保険の海外事業資金貸付保険にはこのような三位一体のルールはない。また、2つの実例から、国際協力銀行と日本貿易保険はOECDガイドラインの統制下にある輸出金融のプログラムよりも、独自のプログラムである投資金融(含む資源金融)や海外事業資金貸付保険を積極的に活用しているということが観察できる。欧州系の輸出信用機関が専ら輸出金融のプログラムを利用しているのとは極めて対照的である。

[*31] IPPとはIndependent Power Producerの略。IPP案件とは独立電力事業者が行う発電所案件を指す。

(つづく)

*次回の「輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第6回(最終回)」は8月3日(木)を予定しております。

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