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【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第2回

2017.07.06 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


2-1-3 石炭火力発電所向け融資

 温暖化対策はこのOECDガイドラインにも及んでいる。昨年(2016年)の改訂作業で石炭火力発電所向けの輸出金融を制限することが決まった。今年(2017年)から発効している。二酸化炭素の排出量が一定水準[*12]を超える石炭火力発電所にはOECDガイドライン参加国は輸出金融を供与しない。

 注目すべき点は、

1)欧米先進国の主要民間銀行の多くが同趣旨の方針を発表し、石炭火力発電所向けの融資を自粛し始めたことである。つまり、政府系輸出信用機関だけが自粛するのではなく、民間銀行も自粛する。欧米先進国の主要民間銀行による石炭火力発電所向け融資の自粛は輸出金融に限定されるものではない。プロジェクトファイナンスを含めあらゆる種類の融資を自粛する趣旨で、いわば石炭火力発電所向けの融資は基本的に行わないという趣旨である。これは非常にインパクトが大きい。もっとも、日本のメガバンクはこの点について対外的に方針を明らかにしていないようである。

2)さらに、OECDガイドラインの当該規定には「条件を強化する目的で2019年6月までに見直しを行い、2021年1月から第2フェーズを開始する」[*13]と明記されていることも注目に値する。つまり、石炭火力発電所向けの輸出金融については今後さらに条件を厳しくしてゆくことが想定されている。

[*12] 例えば、出力500MW以上の石炭火力発電所の場合、kWh当たり750g以上の二酸化炭素(>750g CO2/kWh)を排出するものには輸出金融を供与しない。
[*13] 『ANNEX VI: SECTOR UNDERSTANDING ON EXPORT CREDITS FOR COAL-FIRED ELECTRICITY GENERATION PROJECTS』 の「6.Review and Monitoring」

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