• Home
  • ナレッジ ハブ
  • 【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第2回

【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第2回

2017.07.06 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


2-1-2 融資条件

 輸出金融に関わるOECDガイドラインの目的を達成するためには、各国の輸出信用機関が供与する輸出金融の主要条件について足並みを揃える必要がある。輸出金融の主要条件について足並みを揃え優劣を無くすことで、はじめて輸出者の財・サービスの品質や価格に注目した競争が実現する。さて、輸出金融というファイナンスの主要条件といった場合、具体的にはどういう項目が主要条件になるのであろうか。三大主要条件は、融資金額、返済期間、金利水準である。通常融資金額は多ければ多いほど輸入者(借主)に喜ばれる。返済期間は長ければ長いほど輸入者(借主)に喜ばれる。そして、金利水準は低ければ低いほど輸入者(借主)に喜ばれる。こういう融資の主要条件について、限度を設けないと融資条件の競争を排除することができない。従って、OECDガイドラインはそれぞれについて次のように定める。

 [*9] CIRRsはCommercial Interest Reference Ratesの略。CIRRsは通常シアーズと発音する。

 以上はOECDガイドラインが定める融資の主要条件に関する原則である。なお、返済期間といった場合、融資期間とは異なるので注意したい。返済期間は、建造物が完工して借入金の返済開始から完済までの期間をいう。融資期間は、融資を開始したときから完済までの期間をいう。融資は通常建造物着工時から開始される。つまり、融資期間はおおよそ建設期間と返済期間とを足した和になる。例えば、建設期間3年、返済期間12年であれば、融資期間は15年ということになる。さて、上記のOCEDガイドラインの原則は原則として認識しておかなければいけないが、実際には案件種類やセクターによってさまざまな例外規定が置かれている。主要な例外規定を再び融資金額、返済期間、金利水準の順で見てゆくと次の通りである。

 [*10]PFはプロジェクトファイナンスの略。

 例えば、新興国向けに火力発電所の建設業務(EPC[*11]業務)を請け負ったとすると、利用できる輸出金融の主要条件は、融資金額が輸出金額(EPC金額)の85%まで、返済期間は12年まで、金利水準はCIRRsにリスクプレミアムを加えたものということになる。さらに新興国向けに火力発電所の建設業務(EPC業務)を請け負った場合でプロジェクトファイナンスの手法で輸出金融を利用したとすると、融資金額は輸出金額(EPC金額)の85%までで変わらないが、返済期間は14年まで延ばすことができ、金利水準は市場実勢を反映したものになる。もっとも、これらの融資条件はあくまで最良条件の上限であって、これらより厳しい(従って、借主にとって喜ばしくない)条件に変更するのは各輸出信用機関の判断でできる。さらに、借主の信用力に不安があれば、輸出金融の供与を辞退するのも各輸出信用機関の判断次第である。ここに示した新興国向け火力発電所の事例は、輸出信用機関が輸出金融を供与するとした場合の最良条件(従って、借主が最も歓迎するような条件)を例示している。

 [*11] EPCはEngineering, Procurement and Constructionの略で、設計・調達・建設を意味する。プラント業界の受注形式はEPCが普通である。

 上記に説明してきた輸出金融の主要条件に関する原則規定と例外規定とを、比較できるように一表に整理しておこう。

【OECDガイドラインの融資の主要条件】

次ページへ 石炭火力発電所向け融資の場合

1 2 3 4 5

, , , , , , ,


デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

月別アーカイブ