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【レポート】(全6回)輸出信用機関(ECA)とプロジェクトファイナンスー第2回

2017.07.06 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


2-1 OECDガイドライン

 さて、政府系金融機関である輸出信用機関が各国に存在し、それぞれ自国の輸出を支援するためにファイナンスを供与する。輸出業者間では仕事を受注するために熾烈な競争を行っている。例えば、米国の企業、ドイツの企業、日本の企業が新興国で大型プラントの受注を競っているとしよう。新興国の発注者は購入資金が十分手当てできないので、入札を予定している米国、ドイツ、日本の各企業にプラントの品質や価格の提案に加えて、それぞれ自国の輸出信用機関による輸出金融の条件や金利水準も提案するよう要請したとしよう。プラントの品質や価格ももちろん重要であるが、それを購入するためのファイナンスである輸出金融の条件も当然重要である。プラントの品質がほぼ同程度でかつ価格も横並びだったとすれば、輸出金融の条件内容が決め手になり得る。つまり、輸出金融の世界では輸出金融の条件次第で輸出企業の受注が決まることもあり得るのである。輸出金融の条件次第で受注が決まるような事態というのは、各国の政府系金融機関である輸出信用機関の間でファイナンス条件の競争が起こりかねないということである。

 各国の輸出信用機関の間で輸出金融をめぐる条件競争が一時期実際に起こったであろうことは想像に難くない。これはいわば民間企業間の競争を超えた政府間の競争と言うべきものである。そこで、主要先進国は一堂に会して会議を催し、対応を協議した。そして「輸出金融の条件競争はお互いやめようではないか。本来それぞれの民間企業の製品の品質や価格で競争させるべきだ。」という合意に至った。これが1978年OECD主要加盟国間で初めて合意した、輸出金融に関わる「OECDガイドライン」である。次にそのOECDガイドラインの概要を見てゆく。

 OECDガイドラインは通称である。OECDコンセンサスとも呼ばれる。正式名はArrangement on Officially Supported Export Credits(公的輸出金融に関するアレンジメント)[*6]という。 既述の通り1978年に初めて合意文書ができ、以後必要に応じて改訂を重ね、現在の文書に至っている[*7]

[*6]全文は171ページある(2017/2現在)。OECDのHPで見ることができる。http://www.oecd.org/tad/xcred/theexportcreditsarrangementtext.htm
[*7]過去10年程の改訂内容の要旨は国際協力銀行のHPでまとめられている。https://www.jbic.go.jp/ja/finance/export/oecd

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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