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【レポート】(全4回)なぜ交通インフラ事業にプロジェクトファイナンスは難しいのかー第4回

2017.04.17 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:井上 義明


〇「土木工事が多い」への対応策

 3つ目に「土木工事が多い」という点であるが、これは完工リスクをどのように取り扱うかという問題になる。土木工事が多いということは完工リスクが大きくなるとすでに指摘したが、質・量ともに大きな完工リスクを誰が取るのであろうか。

 事業者は建設会社と締結する建設契約において極力建設会社が完工リスクを取ってくれるよう求める。具体的には固定金額の建設契約で完工までの一切の責任を建設会社に負ってもらうよう求める。事業者の立場としてはもっともな要請ではあるが、土木工事の多い建設業務で完工遅延やコストオーバーランがいかに発生しやすいかを熟知しているのは建設会社である。従って、建設会社は事業者の要請を額面通りに応諾することはまずない。そうすると、万が一完工遅延やコストオーバーランが発生した時に建設会社が責任を負わない部分が出てくる。建設会社が責任を負わない部分は事業者の責任にならざるを得ない。つまり、完工リスクはまず建設契約の範囲内で建設会社が負い、建設会社が負わない部分は事業者が負うということになる。最後のツケが事業者に来るというところは注意を要する。建設会社の責任負担は建設契約の範囲内であって、建設契約の責任範囲を上回った部分はもはや建設会社の責任ではなく、事業者の責任となる。

 当該事業の資金調達をプロジェクトファイナンスの手法で行った場合はどうであろうか。プロジェクトファイナンス・レンダーは完工リスクを取るのであろうか。コストオーバーランが発生したら、追加融資をしてくれるのであろうか。プロジェクトファイナンス・レンダーは原則完工リスクを取らない。土木工事の多い交通インフラ事業における完工リスクの怖さも理解しているので、プロジェクトファイナンス・レンダーは事業者の完工保証を求めるのが普通である。事業者の完工保証とは通常完工するまでの間の事業者による債務保証である。完工するまでの間、融資はノンリコースにならないとするのが普通である[*11]

[*11] プロジェクトファイナンス・レンダーが完工リスクを取る例外がある。それは火力発電所の案件である。整地された土地に所定の発電プラントを建設するのであれば、完工リスクはほとんどないと考えられているからである。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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