【レポート】(全2回)インフラファンドで変えるPPP Part.1

2017.01.11 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:中村 裕司


米国の「革新的資金調達」手法

 米国の有料道路事業における伝統的な資金調達手法は、債券の発行である。長期の債券市場が発達しているため、銀行借入れよりも債券の発行コストが低いためだと言われている。
 発行される債券は、償還財源が料金収入に限定されるレベニュー債と、税金からも充当できる一般財源債があるが、一般財源への影響を避けるため大半がレベニュー債である。  これに対し、近年の交通投資需要の増大とそれに伴う財源不足を補うために、最近開発されている資金調達手段は“Innovative Debt Strategies”(革新的な債務戦略)と名づけられ、次に示すものが含まれる。

  • ガービー債(GARVEEs)
  • 民間活動債(PABs)
  • TIFIA
  • 州管理インフラ銀行(SIB)
  • セクション129ローン

 いずれも連邦資金の使用制限を緩和し、民間資金導入の呼び水とすることを図るものであり、1990年代から推進しているPPP(Public Private Partnership)の一環である。

 ガービー債とは、Grant Anticipation Revenue Vehicles(補助金期待収益手法)の略称である。元利等の返済を将来受け取る予定の連邦補助金によって賄うことができる債券である。

 民間活動債は、Private Activity Bondsという免税の債券であり、特定要件を満たす事業に対して内国歳入庁が許可を与える。2005年に改定された道路整備法案SAFETEA-LUにより、道路事業に対しても適用が可能となった。
 TIFIAとは、Transportation Infrastructure Finance and Innovation Act(交通社会資本資金調達および革新法)の略称であり、1998年に制定された信用援助施策である。TIFIAによる信用援助により、資本市場から調達するにはリスクが高すぎる事業であっても、集まる資金を増やすことが可能になる。また、TIFIAが、返済の優先順位が低い劣後債を引き受けることで資本市場から調達される債券の信用が増し、優先債務の格付けを上げることができる。さらに、TIFIAの利率は米国国債や免税地方債の利率よりも有利である。
 州管理インフラ銀行(State Infrastructure Bank=SIB)とは、州政府が管理する擬似的な銀行のことである。一定の要件を満たす事業に対して、貸付や信用援助を行う。連邦資金をてこにして債券発行などが可能となる。

 セクション129ローンとは、料金収入や様々な税収を含む歳入の流れを通じて、当該事業を支援するために連邦政府が州政府の融資に関与することを認める制度である。SIB同様、この融資は州政府が財源を追加する梃子として活用し、また他の適格の事業に対して支援を再循環させることを認めている。

【関連記事】
【レポート】(全3回)海外では一般的な「アベイラビリティ・ペイメント方式」 Part.1
【レポート】(全3回)曲がり角に来た米国の道路コンセッション方式 Part.1
558橋の架け替えと25年間の維持点検を一括発注・米国ペンシルベニア州

 

 

1 2

, , , , , ,


デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

月別アーカイブ