【レポート】(全2回)インフラファンドで変えるPPP Part.1

2017.01.11 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:中村 裕司


資金調達と新たな財源確保は別

 整備であれ、維持管理であれ、運営であれ、道路事業を行うために必要な費用を調達する手法は二つしかない。税金で賄うか、料金収入で賄うかである。税金で賄う道路は無料道路、料金収入で賄う道路は有料道路である。

 いずれの方法を取る場合でも、資金調達と新たな財源の確保は全く異なるものである。国債や地方債を発行して事業費を調達することは国民からの借金であり、いずれ税収の中から返済しなければならない。この意味で、新たな財源を確保したことにはならない。
 他方、民間からの出資や融資を募り、その弁済は事業収入によって行う場合、税金は投入しない。利用者による負担となる。この意味で、民間からの出資・融資によって事業を執行していくことは、国や地方が借金したことにはならず、新たな財源を確保したことになる。

 なお、英国を中心に適用されているシャドー・トール(Shadow Toll)方式や、米国で適用例が増えているアベイラビリティ・ペイメント(Availability Payment)は、民間からの出資や融資による道路整備事業を促進する手法ではあるが、税金を使って毎年、民間事業者に支払いを行うわけだから、新たな財源を確保したものではない。日本でこれまでに実績のある「サービス購入型PFI(Private Finance Initiative)」と類似した借金の延べ払いである。

 また、米国で最近開発されている新たな資金調達の手法は、政府による債券発行や信用保証を事業の呼び水として活用し、その効果によって民間からの出資や融資を促進する仕組みであるものが多い。手法そのものは税金(あるいは借金)に拠っているが、基礎となる一部の助成金を拠出して民間出資を誘発し、結果として新たな財源を確保しているところが斬新である。  こうした観点から今回は、初めに米国の「革新的な債務戦略」と呼ばれる新たな資金調達について述べ、次いで新たな財源としてのインフラファンドについて世界的な趨勢を検証し、最後に債務とファンドの組み合わせによる新たな財源の確保の可能性について提言する。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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