2026.08.09
【コラム】(プロファイバンカーの視座)第200回 米国のLNG事業(2)
2026.07.23 連載コラム
【技術的イノベーションと米国のLNG輸出】
前回は米国のシェールガスの生産量が過去20年の間急伸してきたという事実と、シェールガスの生産に初めて成功したジョージ・ミッチェルCEO率いるミッチェル・エネジー社のお話やそのミッチェル・エネジー社を買収したデヴォン・エネジー社のお話をしました。今回はその続きです。
頁岩(シェール)から石油や天然ガスをどうやって採掘できるようになったのか、という技術的な点も見ておきましょう。頁岩から石油や天然ガスを採取する方法を可能にしたのは2つの採掘技術上のイノベーションがあったからです。1つは水圧破砕(Hydraulic Fracturing)です。もう1つは水平掘削(Horizontal Drilling)です。水圧破砕は、頁岩に化学品を含んだ水を高圧で噴射し頁岩を破砕するものです。これにより内部にある石油や天然ガスを取り出すことができるようになりました。また、水平掘削は地中内で水平方向に掘削をすることです。頁岩の層は実は地中内で水平方向に広がって存在しています。従って、水平掘削で頁岩層の存在するところに沿って掘削することができると、掘削費用を大幅に引き下げることができます。これまでの在来型の石油や天然ガスは地中内の1カ所に集中的に存在しているのが普通でした。ですから、その場所に地上から垂直に掘削していけば事足りました。ところが、頁岩層は地中内で水平方向に広がっているので、従来の垂直掘削の方法ではいくつもの掘削作業を行わなければならず掘削費用が嵩んでしまいます。これでは効率的な採取ができません。こうして水圧破砕と水平掘削の2つの技術的なイノベーションが合体して、シェールガスの商業生産が可能となりました。
さて、前回米国のシェールガスの生産量がものすごい勢いで伸長している様子をグラフで確認しました。当面生産量はまだまだ増加する模様です。このシェールガスの生産量増加に伴い、米国はシェールガス(天然ガス)を液化して輸出するようになりました。米国による本格的なLNG(液化天然ガス)輸出開始はちょうど10年前の2016年です。2016年以降米国によるLNG輸出量もまたものすごい勢いで伸長を続けています。下記の棒グラフをご覧ください。
【米国のLNG輸出量】
(注)公表資料等から筆者作成
上記の棒グラフは米国によるLNGの輸出量の推移を示しています。輸出量の単位は万トンです。横軸は西暦で、2016年から2025年までの10年間が実績値で、2030年は予想値です。2030年の米国のLNG輸出量の予想値はアナリストによって1億5,000万トンから1億8,000万トンと幅があります。上記の棒グラフでは2030年の米国のLNG輸出量の予想値を1億7,000万トンとしておきました。
昨年2025年の米国のLNG輸出量は1億1,100万トンです。米国のLNG輸出量が初めて1億トンを超えました。これは驚くべきことです。そして、2030年の米国のLNG輸出量の予想値には幅があると申しましたが、2025年の実績値1億1,100万トンの1.5倍程度まで増加すると多くのアナリストが予想しているのは間違いありません。
プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明
*アイキャッチ UnsplashのAntonio Cuellarが撮影した写真のAntonio Cuellarが撮影したイラスト素材
【バックナンバー】
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