【コラム】(プロファイバンカーの視座)第199回 米国のLNG事業(1)

2026.07.09 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


【米国のシェールガス】

今回から新しいテーマを採り上げます。今回から採り上げる新しいテーマは米国のLNG(液化天然ガス)事業です。米国のLNG事業はここ10年余で急成長を遂げています。この急成長の背景や急成長の実態を見てゆきたいと思います。

まずは米国のシェールガスについて見てゆきましょう。シェールガスの生産量急伸が米国のLNG事業を支えているからです。今世紀に入ってから米国のシェールガスの生産量は伸長しました。その急伸ぶりには瞠目します。特に2010年以降の伸長ぶりが顕著です。現在米国における天然ガス生産量の約80%がシェール層(アパラチア、パーミアン、ヘインズビルなどの主要盆地)から産出されるシェールガスです。

下記の棒グラフをご覧ください。この棒グラフは米国のシェールガスの生産量の推移を示したものです。横軸は西暦で、2000年以降5年毎に数字を採りました。生産量の単位はTcf (Trillion cubic feet)です。

【米国シェールガスの生産量推移】

(注)米国エネルギー情報局(EIA)のデータ等を基に筆者作成

シェールガスというのは硬い頁岩(けつがん)のなかに存在する天然ガスのことです。シェール(shale)は頁岩のことです。そのなかに存在するのでシェールガスと呼んでいます。シェールのなかには石油も存在しています。石油の場合にはシェールオイルと呼びます。

従来から頁岩のなかに石油と天然ガスが存在することはわかっておりました。しかし、これらを経済的に成り立つような安価な方法で採掘する方法がなかなか見つかりませんでした。シェールガスの生産に初めて成功したのは、ジョージ・ミッチェル(George P. Mitchell)CEOが率いるミッチェル・エネジー社(Mitchell Energy & Development Corp.)です。米国の独立系の中堅石油会社です。1998年のことです。米国にはご存じの通り、エクソン・モービルやシェブロンといたオイルメジャーが存在しています。また欧州系のオイルメジャーBPやシェルも米国で事業を展開しています。こういったオイルメジャーがシェールオイルやシェールガスの商業生産に成功したのではありません。商業生産に初めて成功したのは、独立系の中堅石油会社だったわけです。まずこの点は注目に値します。つまり、イノベーションというのは必ずしも大企業で起こるわけではないということの証左かと思います。

ミッチェル・エネジー社がシェールガスの生産に初めて成功した場所はテキサス州のバーネット・シェールの一角です。そこには今でも「SHグリフィン第4天然ガス井」「1998年掘削」という碑が建っているそうです。この成功を耳にした同業のデヴォン・エネジー社(Devon Energy)は2002年にミッチェル・エネジー社を買収します。デヴォン・エネジー社のCEOラリー・ニコルズは「当時シェールの掘削が可能だと考える者はミッチェル・エネジー社と我々以外、文字通り誰もいなかった」と語っています(注)

ところで、デヴォン・エネジー社ですが、同社の存在を筆者は1990年代後半に知りました。というのも、1996年から2000年までの4年間筆者は邦銀のヒューストン支店に駐在していたからです。そこでプロジェクトファイナンスとエネルギーファイナンス(石油・ガス関連のファイナンス)を担当するグループのグループ長をしておりました。部下の米国人課員の尽力でデヴォン・エネジー社向けリザーブ・ベース・ファイナンス(石油・ガスの埋蔵量を担保にしたファイナンス)の協調融資に初めて参加することができたのがきっかけで、同社のことを知るようになりました。

なお、デヴォン・エネジー社は2026年5月同業のコテラ・エネジー社(Coterra Energy)と合併をしました(残存会社はデヴォン・エネジー社)。これにより、時価総額500億ドルを超える、米国屈指の巨大独立系E&P企業へと変貌を遂げています。この合併により、テキサス州およびニューメキシコ州にまたがる「パーミアン盆地(特にデラウェア盆地)」の優良資産がさらに拡充されました。

(注)
ダニエル・ヤーギン『新しい世界の資源地図 – エネルギー・気候変動・国家の衝突』(東洋経済新報社2022年)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ UnsplashStephen Walkerが撮影した写真のStephen Walkerが撮影したイラスト素材

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