2026.07.12
【コラム】(プロファイバンカーの視座)第198回 2025年のプロジェクトファイナンス市場(6)
2026.06.25 連載コラム
【プロジェクトファイナンス市場ーセクター別2】
前回は「2025年プロジェクトファイナンス市場のセクター別内訳」を見てゆきました。繰り返しになりますが、この円グラフはプロジェクトファイナンスの利用が多いセクター(業種)を5つに分けたものです。5つのセクターとは、大きい順に電力(Power)、通信(Telecommunications)、石油・ガス(Oil & Gas)、交通(Transportation)、その他(Others)でした。
このうちの3番目の石油・ガスについて、少し補足いたします。2025年は大型の石油・ガス事業案件が米国に2件あったとお話しました。この2件はいずれもLNG(液化天然ガス)事業です。米国ではここ10年余LNGブームが起こっています。実は20数年前つまり今世紀の初め、多くの専門家が「米国では近い将来天然ガスが不足する」と考えていました。考えていただけではなくて、このままでは大変だということで、米国内で一時50件を超えるLNG輸入基地の建設計画が存在しました。つまり、LNGを輸入して、将来の天然ガス不足に備えようとしたわけです。ところが、この危機を救ったのがいわゆる「シェール革命」です。米国内でシェールオイル・シェールガスの商業生産が軌道に乗り、予想を上回る量の石油と天然ガスが自国内で生産できるようになりました。いまや、米国の石油生産量は日量約1,370万バーレル(2026年5月最終週のEIA報告)にも及び、サウジアラビアとロシアを凌駕しています。米国はいまや世界最大の石油生産国です。さらに天然ガスの生産量も世界最大で、2023年にはLNGの輸出量が初めてカタールと豪州のLNG輸出量を超え、世界最大になりました。LNGの輸出量でも米国が最大になったという事実は本当に驚きです。20数年前の50件を超えるLNG輸入基地の建設計画のうち、一部の計画は実行され建設もされましたが、後刻LNG生産・輸出基地につくり変えています。米国の石油・ガス業界はこの約20年で「LNG輸入の計画」から「LNG輸出」へ大転換したわけです。
さて、前回掲載の「2025年プロジェクトファイナンス市場のセクター別内訳」の円グラフに戻ります。この円グラフは内枠が案件数、外枠が融資金額でした。それぞれセクター毎に融資金額(外枠)を案件数(内枠)で割ってみます。そうすると、セクター別の1案件当たりの融資金額を算出することができます。こうしてセクター別の1案件当たりの融資金額を算出して、棒グラフにしたものが次の棒グラフです(なお、Othersの1案件当たりの融資金額の算出は省略しました)。
【2025年プロジェクトファイナンス市場のセクター別内訳 – 1案件当たりの融資金額】
(出典)LSEGの資料から筆者作成
セクター別の1案件当たりの融資金額を示した上記の棒グラフを見て、どんなことにお気づきでしょうか。まず「石油・ガス(Oil & Gas)」と「通信(Telecommunications)」の2セクターの1案件当たりの融資金額がかなり大きいということにお気づきかと思います。それぞれ約14億米ドル、約13億米ドルあります。プロジェクトファイナンスの融資金額は一般的には総事業費の7割程度です。従って、「石油・ガス」分野の1事業当たりの総事業費は平均約20億米ドルで、「通信」分野の1事業当たりの総事業費は平均約18.5億米ドルであろうと推測することができます。「石油・ガス」と「通信」の分野は総事業費(事業規模)がかなり大きいということがわかります。
一方、「交通(Transportation)」と「電力(Power)」の1案件当たりの融資金額は上記の棒グラフから小さいということも明らかです。特に「電力」は発電事業が中心で、再生可能エネルギー事業が8割から9割を占めているというお話をしました。再生可能エネルギー事業の規模は「石油・ガス」や「通信」の事業規模に比べると、どうしても相対的に小さくなります。事業規模が小さければ、当然融資金額も小さくなります。既に触れましたように、プロジェクトファイナンス市場における電力分野は金額で約2,810億米ドルと市場全体の約46%を占め、案件数では766件と市場全体の約67%を占めています。このため、1案件当たりの融資金額は最も小さくなります。
(「2025年のプロジェクトファイナンス市場」完)
プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明
*アイキャッチ UnsplashのPhyllis Lilienthalが撮影した写真のPhyllis Lilienthalが撮影したイラスト素材
【バックナンバー】
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