【コラム】(プロファイバンカーの視座)第197回 2025年のプロジェクトファイナンス市場(5)

2026.06.11 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


【プロジェクトファイナンス市場ーセクター別】

2025年の世界のプロジェクトファイナンス市場をセクター別(業種別)に見てゆきたいと思います。ここでいうセクター別というのは、プロジェクトファイナンスはどのようなセクター(業種)で利用されているのか、ということです。このセクター別の情報を見てゆくと、さまざまな示唆を得ることができます。例えば、このセクター別の情報から「プロジェクトファイナンスはどのようなセクター(業種)で、あるいはどのようなセクターの事業で頻繁に利用されているのか」がわかります。読者のみなさまはさまざまな事業に携わっておられると思いますが、「この事業はそもそもプロジェクトファイナンスを利用しやすいのだろうか」という疑問を持つことがあろうかと思います。そういう疑問に対するおおざっぱな解答は、これから見ていただく情報・データの中におおむね存在しています。結論を先取りして申し上げると、プロジェクトファイナンス案件の約9割が「電力」「通信」「石油・ガス」「交通」の4セクターの事業で利用されています。つまり、これら4セクターの事業であれば、「セクターとしてはプロジェクトファイナンスを利用しやすいはず」とおおよその見当をつけることができるわけです。言い替えますと、これら4セクター以外の事業だとすると、「セクターとしてはプロジェクトファイナンスの利用例は少ないようだ」と予想することができます。それではセクター別の情報・データを見てゆきましょう。

【2025年プロジェクトファイナンス市場のセクター別内訳】

(出典)LSEGの資料から筆者作成

上記の図表は2025年の世界のプロジェクトファイナンス市場をセクター別に整理したものです。内枠が案件数で、外枠が融資金額(単位はUSD Billion)です。繰り返しになりますが、2025年の市場規模は約6,050億米ドルで、プロジェクトファイナンスの案件数は1,136件です。上記図表の円グラフは内枠も外枠も5つのセクターを表示しています。5つのセクターとは、大きい順に電力(Power)、通信(Telecommunications)、石油・ガス(Oil & Gas)、交通(Transportation)、その他(Others)です。

電力(Power)が圧倒的に多いです。金額で約2,810億米ドルです。案件数で766件です。金額で市場全体の約46%、案件数で約67%を占めています。金額で約半分、案件数では3分の2です。今世紀に入ってから、電力セクターのプロジェクトファイナンスは常にセクター別ランキングで第1位を占めてきました。電力セクターの案件は具体的には発電案件です。電力セクターには送配電事業もありますが、送配電事業でプロジェクトファイナンスが利用されることは多くはないです。さらに発電案件の具体的な内容ですが、現在は再生可能エネルギー事業が8割から9割を占めています。再生可能エネルギー事業の中では風力発電が圧倒的に多いです。それに次ぐのが太陽光発電です。新設の石炭火力発電向けのプロジェクトファイナンスは約10年前に無くなりました。石炭火力発電向けのプロジェクトファイナンスが無くなる契機となったのは、2015年の「パリ協定」です。そういう意味で「パリ協定」はプロジェクトファイナンス市場に大きなインパクトを与えました。それ以前のプロジェクトファイナンス市場を見ると、特に日本企業の推進する事業のプロジェクトファイナンスを見ると、アジアでの石炭火力発電事業向けのプロジェクトファイナンスが多数ありました。この約10年の変化は、今振り返ってみても、大きな変化だったと言えます。

電力(Power)に次いで多いのは、通信(Telecommunications)です。具体的には光ケーブルの敷設事業が多く見られます。通信は金額で約1,530億米ドル、案件数で118件です。金額で市場全体の約25%、案件数で約10%を占めています。2025年に関しては、大型の通信事業案件が米国に2件、ドイツとスペインにそれぞれ1件ありました。この4件の通信事業案件だけで約240億米ドルのプロジェクトファイナンスの融資を実現しています。

3番目が石油・ガス(Oil & Gas)です。石油・ガスは金額で約820億米ドル、案件数で57件です。金額で市場全体の約13%、案件数で約5%を占めています。石油・ガス事業の案件は米国と中東などの産油国に多いです。2025年は大型の石油・ガス事業案件が米国に2件、中東に2件ありました。この4件合わせて約400億米ドルのプロジェクトファイナンスの融資を実現しています。約400億米ドルというと、約820億米ドルの半分に当たります。57件のうち、大型の4案件だけでセクター全体の半分の融資額に達したということになります。

最後の4番目が交通(Transportation)です。交通は金額で約470億米ドル、案件数で91件です。金額で市場全体の約8%、案件数でも約8%を占めています。案件数91件は石油・ガスの案件数57件をかなり上回っています。

(次回に続く)

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ UnsplashHuynh Linhが撮影した写真のHuynh Linhが撮影したイラスト素材

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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