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【寄稿】プロジェクトファイナンスのMyths and Truths 途上国民間投融資促進の為に(前編)

2024.08.29 ナレッジ ハブ

ナレッジパートナー:小林 文彦


1. 世界銀行グループとIFC

1-1 世界銀行グループの概要(*3)

世界銀行グループは、2030年までに達成すべき2つの目標を掲げています。

  • 極度の貧困を撲滅:1日1.90ドル未満で暮らす人々の割合を2030年までに3%以下に減らす
  • 繁栄の共有を促進:各国の所得の下位40%の人々の所得を引き上げる

世界銀行は、世界中の途上国にとって欠かせない資金源、技術援助機関です。世銀は普通の銀行とは異なり、貧困削減や開発支援を目的とした他に例のないパートナーシップです。世銀グループは5つの機関(IBRD、IDA、IFC、MIGA、ICSID)で構成されており、その重要意思決定は加盟国が行います。世界銀行グループ(本部所在地:米国ワシントンD.C.)は1945年に設立され、1万人以上の職員が世界120か国以上で業務にあたっています。

1-2 私が考えるIFCのビジネス・モデル

IFCはその設立合意書で、投融資に対して政府保証を取ることを禁じられていますが、毎年10-20億ドル程度の純利益を計上しており、私は、これを「利益のでる開発援助」と呼んでいます。民間セクターへの投融資で利益を出すということは投融資先企業が、資機材納入業者に代金を支払い、従業員に給与を支払い、輸送料・家賃・保険料・電気水道料金などの諸経費を支払い、さらに、国や自治体に税金を納めながら、融資元本返済と金利支払をし、株主に配当することを継続的に実現できているということです。つまり、IFCが利益を上げているということは、投融資先企業が、それに関わる全てのステークホルダーとWin-Winの関係を作れている証です。

IFCは資金ソースも豊富です。IFCは1956年に加盟国からの出資金で創立されましたが、現在その主たる資金ソースは利益剰余金と格付けがAAAの社債です。それらに加えてB loan programやParallel loanというシンジケーション・プログラムを使って、民間金融機関によるIFCプロジェクトへの参加を促進しています。さらに2009年に設立されたIFC Asset Management Companyというファンドを通じて官民の投資家から、equity投資の為の資金も集めています。これらはIFCの中で言わばメインストリームの資金ソースですが、それら以外にも案件ごとにテイラーメイドの資金も組成されています。例えば当該国の現地通貨建て年金基金の資産をインフラ投資に回せるスキームを組成するようなこともしています。

IFCには100以上の現地事務所と4,000人程のスタッフがおり、投融資担当官のほとんどは、MBAを持つバンカーであり、途上国民間投融資の豊富な知識・経験と世界銀行グループのクラウト(影響力)により、高度なプロジェクト組成力とリスク・マネジメント力を持っています。そして、スタッフの半分は現地事務所におり、地理的にもクライアントに近い場所で業務を遂行しています。IFCは、さらに、プロジェクト事業者に契約遵守とE&Sなどの各種コンプライアンスを要求し当該国のビジネス・スタンダードの向上を促進しています。IFC自身のガバナンスやコンプライアンスについても、様々なルール(*4)を採用して透明性を維持した業務を厳正に行なっています。しかし、そのようなIFCでも組成の比較的容易な電力プロジェクト以外には途上国でバンカブルなPPPインフラ・プロジェクトの形成は容易ではないというのが実情です。別の言い方をすれば、資金はあってもその資金を投資できる案件を形成することが十分には実現できていないという現実があります。

(*3)
https://www.worldbank.org/ja/about/what-we-doより抜粋
(*4)
Governance & Compliance:Board of directors, IEG (Independent Evaluation Group), INT (Integrity Vice Presidency), AML/CFT (Anti-Money Laundering/Combating the Financing of Terrorism), KYC (Know Your Customer)、PEP (Politically Exposed Person), etc.

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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