【コラム】第5回　保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について

2021.11.16 連載コラム

ナレッジパートナー：須知義弘

前回はContract Suretyの説明をしたので、今回はCommercial Suretyについて解説したい。Commercial Suretyとは、法律や規則等から発生する債務者の義務を、保険会社が債権者に対して保証するものである。図示すると以下の通りとなる。

さて、具体的なCommercial Bond は、次のようなものが挙げられる。

License/Permit Bond：ライセンスや免許が必要な業種が、国、地方政府または業界団体に対して、そのライセンスや免許を取得する際に差し入れるものであり、業界毎に様々なBondが存在している。たとえば、アメリカで車のディーラー（会社自体とその従業員）に対してのLicense Bondがあるが、これは、ディーラーが行う詐欺や不正行為から消費者を守るものである。
Court Bond (Appeal Bond, Injunction Bond, Replevin Bond,etc.)：上記License/Permit Bondと同様にCourt Bondにも様々な種類のBondが存在している。Appeal Bondとは、下級審で負けた原告/被告が上級審に控訴する場合に、下級審での請求金額を予めBondで裁判所に差し入れておくものである。また、Injunction Bondとは、原告が、被告への差し止め請求を裁判所に行った場合に裁判所に差し入れるBondであるし、Replevin Bondとは、たとえば、家賃を滞納して、資産を差し押えされてしまった賃借人が、法的手続き中に、その資産を使用する為に裁判所に差し入れるBondである。また、Court Bondはブラジルで非常にポピュラーなBondであるが、これはブラジルが、税制の複雑さの為に、税に関わる多数の訴訟が起されており、訴訟を起こす為の保証金としてBondが用いられているからである。
Reclamation/Decommissioning Bond：たとえば、Reclamation Bondは、天然資源を採掘する企業、Decommissioning Bondは、発電事業を行う企業が、公共の土地で採掘/発電事業を終了した時に、その土地の原状回復（或いは予め決められた状態への回復）をその土地の所有者である政府や地方公共団体に保証するものである。
Customs Bond：輸入者が関税等の支払いができないときなどの場合に、その支払いを確実にするために、税務当局が輸入者に求めるBondである。
Lost Securities Bond：小切手などの有価証券をその所有者が紛失等した場合に、その有価証券の発行者が、紛失した有価証券を取得した第三者から求償された時の損失をカバーするBondである。Principalは有価証券の所有者である。
Pension Deficit Bond：主としてイギリスで用いられているBondである。企業が従業員の確定給付年金を積み立てる際に、将来の予想給付額と現在の積立額に差額が出た場合は、保証金でその差額を埋めることが、年金の管理者から求められる。その保証金の代わりにこのBondが用いられる。
Casualty Insurance Deductible Bond：主としてアメリカで用いられているBondである。労災などの強制保険は、仮に企業が免責金額のあるカバーを買っていたとしても、事故があった場合には、保険会社はその免責金額を含んだ金額を払う必要がある。保険契約者は、この免責金額を予め保険会社に差し入れておく必要があるのだが、それをBondで代用することが出来る。

特に、最後の2つの例が示すように、Bondを保証金の代わりに使うことが出来るので（この点は銀行保証も同じだが）、それぞれの国の法律/規則、またObligeeがBondを認めるかどうかにもよるが、今後様々な用途で使うことが期待されるだろう。

須知義弘

*アイキャッチ　Photo by L.Filipe C.Sousa on Unsplash

【バックナンバー】
・【コラム】第4回　保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について
・【コラム】第3回　保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について
・【コラム】第2回　保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について
・【コラム】第1回　保険ブローカーから見たシュアティボンドの活用方法について