【講演録】橋梁のセルフメンテナンス「 ふくしまモデル」の取組み(後編)

2020.03.18 ナレッジ

ナレッジパートナー:株式会社アイ・エス・エス


下支えとなる活動

 取り組みを支えているのは活動あるいはインフラの維持管理についての地域の理解です。地域のひとに対して、いきなり「チェックシートで点検してください」とお願いするのは無理な話です。わたしたちはまず橋梁を知ってもらうための活動を行っています。そのいくつかを紹介いたします。

 わたしも何度か聞いたことがあるんですが、地元の方に「地元に橋ってどれくらいあるか知ってますか?」って聞いてみると、意気揚々と答えてくれます。「ここらへん、橋っていうと1橋しかないよ」と。実はその地域には100近い橋梁があるんですよね。そう答えた方は、きっと、「橋」と言われて想像する橋が1橋しかなかったんでしょうね。アーチやトラスなどの「分かり易い橋」だけを橋だと思っているパターンが多いです。でも、この写真も、農地を流れる水路に架かる橋なんですよね。あまりにも日常に溶け込みすぎていて、身近な橋梁の存在を知らないことが意外と多いです。なので、まずは地域のみなさまに、地域の橋を知ってもらうための活動をしています。地域の橋を知ってもらうための活動として具体的な活動を3つ紹介します。

 まずは一つ目、タイトルですが「夏休み自由研究講座「コンクリート」について親子で学ぶ会」です。普段はなかなか入ることが出来ない大学の教室で、実際の先生から講義を受け、大学の敷地内で、コンクリ―トが実施にどのような場所で使われているのかを探索しました。みんなで固まる前の柔らかいコンクリートに触れ、好きな型に流し込んで固まる様子を観察するなど、コンクリートでわくわくする体験をしてもらいました。

 二つ目は、コンクリートではなく、橋がターゲットです。橋の歴史、橋の作られ方、橋を長持ちさせるために自分たちができることを講義で学びます。それを踏まえて、橋のペーパークラフトを組み立てながら、橋の構造や部材、その役割を学びました。作っただけで終わらず、実際に近くの橋を見に行って、自分が作った橋と、実物を見比べたのですが、きっとたくさんの発見があった体験になったと思います。

 最後は今年度6月に行った、「橋守活動を知って自己の将来を考える学習会」です。先ほど、学生主導型の取り組みで紹介した、旧黒川群のひとつ、大郷町の中学生に取り組んでもらいました。  黒川高校が4年目として取り組んでいる最後のエリアが、この大郷町です。そこで、地元の中学生にもインフラの現状を学んでもらおうと企画しました。中学校で社会インフラの老朽化問題を取り上げて、橋守活動を実践する出前授業は恐らく全国で初の試みだと思うのですが、学校の年間行事や授業計画の兼ね合いから、半年以上前から企画し、あらゆる調整のうえでようやく実現した企画でした。

 対象は2年生の2クラス、60名前後の中学生です。半日の体験ですが、まずは橋の維持管理について簡単な講義を行い、橋も予防保全が大切であると分かり易く解説します。体験のメニューは2つで、近くの橋に移動して点検・清掃活動の体験と、ペーパークラフトで橋の模型作成を行いました。わいわいと楽しみながら取り組んでもらいましたが、普段何気なく通っている道路が、実は橋だったという気付きがあったり、橋面からしか見えていなかった橋梁の構造を知ることが出来たりと、発見の多い1日になったようです。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
ISS-アイ・エス・エス

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