【講演録】橋梁のセルフメンテナンス「 ふくしまモデル」の取組み(後編)

2020.03.18 ナレッジ

ナレッジパートナー:株式会社アイ・エス・エス


 因みに、この年は登山道を舗装するプロジェクトも実施しており、平田村タイアッププロジェクトとして、1.5Kmの芝山登山道を産官学民の協働によって全線舗装を完了させました。動画を用意したので、少し観てもらおうと思います。この手前のおじさまも、地域の方なんですよね。登山道だけあって雰囲気のいい場所で、なかなか楽しそうじゃないですか?学生も参加しているので、幅広い年代が一丸となって作業に取り組んだようです。タイムラプス動画のこちらは、完成した登山道です。意外と長距離ですよね。

 この取り組みでは、産官学民が連携することで「Win-Win-Win-Win」となる形を目指しました。この舗装を通常のやり方でやろうと思うと自治体が建設業者に依頼して実現するわけですが、産官学民で取り組むとこのイラストのようにそれぞれが出来ることをやるわけです。実現するまでのコストが1/3~1/5削減できる取り組みですが、参加するみなさまにとってWinになることがポイントです。

 資材の提供や指導を行う地元の建設業者は市民に直接自社を知ってもらう機会となり、地域からの信頼度向上につながります。参加する学生は実習体験ができ、なかなか取り組む機会のない地域貢献につながります。村民にとっては高齢化が進むこの地域で学生を中心とした若い世代との交流ができ、地域間交流が深められるといったWinがあります。最後に、役場にとっては道づくりの予算削減や村道の健全化に繋がるわけです。

 少し話が逸れましたが、福島県平田村でのこの活動を続けて、2019年に5年目を迎えました。長い時間をかけて、様々なイベントを通じて理解醸成に取り組み、地域全体で住民が積極的に点検活動にご参加くださる取り組みへと成長することが出来ました。

 平田村の住民の方にとって取り組みやすい形になるよう工夫したこともあります。例えば、取り組みでリーダー的存在となる各行政区長が主導する行事に橋梁点検と清掃活動を組み込んだことはその工夫の一つです。春夏秋冬の各シーズンに1回清掃活動などがあるので、そのうち2回に橋梁点検・清掃活動を加えました。既にある団体・行事を活用できたことで負担少なくできたように思います。取組みを持続的なものとするには継続しやすい環境づくりは大事な点です。

 このグラフはセルフメンテナンスでどのような効果が得られているかを示したものになります。

 2015年度からの歯磨き指数の推移を示したグラフですが、2015年は歯磨き指数が4.75だったものが、3年後の2018年には2.16となっていて、総じて橋面の汚れが減少していることが分かります。

 2017年は年2回の活動で、対象となった30橋の同じ橋を2回清掃しているため、非常に低い数値になっています。一方、2018年は対象となった60橋を30橋ずつ2回に分けて取り組みましたので数値は上がっていますが、初めて清掃した橋が3.02だったのに対し、以前清掃したことのある橋が1.28になるなどこの5年程度でも状態の改善が分かるかと思います。橋マップでも2015年度と2018年度ではその見た目に大きく違いが出ています。2015年度は橋梁数も少なく色のついたピンもまばらでしたが、2018年度には圧倒的に対象が増え、その殆どが青あるいは緑の状態です。殆どの橋梁で綺麗な状態が保たれていることが非常に大きな成果です。点検・清掃活動の回数を重ねるほどその橋梁の歯磨き指数が減少し、簡易な予防保全としてセルフメンテナンスがしっかりと機能していると統計的にも分かるところまでくることができました。

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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