【寄稿】港湾法の一部改正 ー洋上風力発電事業の動向に着目してー

2019.12.28 ナレッジ

ナレッジパートナー:越元 瑞樹


4. 海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する行政財産の貸付け制度の創設(改正港湾法第55条の2関係)

 国土交通大臣及び港湾管理者は、基地港湾の海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する行政財産である港湾施設を海洋再生可能エネルギー発電設備等の設置及び維持管理をする者に貸し付けることが可能となる。[*12]

 なお、本改正法成立前の港湾法上において、既に「特定埠頭を構成する行政財産の貸付け」(港湾法第54条の3)及び「埠頭群を構成する行政財産の貸付け」(同法第55条)の制度が存在した。これらの規定は、①国有財産法第18条第1項及び地方自治法第238条の4第1項の適用を排除していること、②一定の認定、指定又は許可を受けた者を対象とすること及び③民法第604条 [*13] 並びに借地借家法第3条及び第4条等の適用を排除していること等、改正港湾法における基地港湾の貸付けと条文構造を同じくしている点において、今後の海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する行政財産の貸付け制度の運用に当たっては参考となるところと思われる。

(1)  国土交通大臣による貸付け

国有財産である港湾施設は、国土交通大臣によって、以下の要件を充足する場合には貸し付けることができるものとされている(改正港湾法55条の2第1項)。

①基地港湾の海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する港湾施設であること
②国有財産法上の行政財産に該当すること
③国土交通大臣の直轄工事(港湾法第52条参照)によって生じた港湾施設であること
④a.港湾法第37条1項又はb. 再エネ海域利用法第10条1項の許可を受けた者であって、かつ海洋再生可能エネルギー発電設備等の設置及び維持管理をする者(以下「許可事業者」という。)に対する貸付けであること

また、港湾管理者の同意(改正港湾法55条の2第2項)及び国土交通大臣と財務大臣との協議(同条第3項)も必要とされている。

(2)  港湾管理者による貸付け

 地方自治法上の行政財産に該当する港湾施設は、港湾管理者によって、以下の要件を充足する場合には貸し付けることができるものとされている(改正港湾法第55条の2第4項)。

①基地港湾の海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する港湾施設であること
②地方自治法上の行政財産に該当すること
③許可事業者に対する貸付けであること

 なお、港湾管理者による貸付けに際しては、国土交通大臣の認可を取得することを要しないとされている(改正港湾法第55条の2第7項で読み替えて適用する第46条1項ただし書)。

(3)  貸付料

 海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭の貸付料については、当該埠頭の改良に要した事業費、当該埠頭を借り受ける洋上風力発電事業者等の見込み等を考慮し、基地港湾ごとに今後適切に設定される予定であり、具体的には、当該埠頭の改良を行うために要した費用を一定期間内に回収することができるような料率設定が検討されている。

(「港湾法の一部を改正する法律案」の概要より 出典:国土交通省)

[*12] 我が国において洋上風力産業を発展させるためには、既に導入が進んでいる欧州の先進的な取組を取り入れることも重要と認識されている。第200回国会においては、国土交通大臣及び経済産業大臣としては、公平性に留意しながら、海外資本か否かにかかわらず、適切に審査、評価していくとの答弁がなされている(衆議院国土交通委員会高田政府参考人答弁(2019年11月13日)参照)。

[*13] 「特定埠頭を構成する行政財産の貸付け」及び「埠頭群を構成する行政財産の貸付け」は私法上の貸付けに該当すると解されており(多賀谷一照「詳解 逐条解説 港湾法 改訂版」385頁及び389頁(第一法規、2015年))、それゆえ長期の貸付けを可能とするために賃貸借契約の存続期間の上限を定めた民法604条の適用を排除する必要があったと考えられる。本改正法の第55条の2においても同様に民法604条の適用を排除していることから、「海洋再生可能エネルギー発電設備等取扱埠頭を構成する行政財産の貸付け制度」も同様に私法上の貸付けに該当する前提とされていると思われる。

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