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【コラム】第3回 民間の貿易保険(取引信用保険、ポリティカルリスク保険、ストラクチャードクレジット保険)の活用について(3)

2019.10.08 連載コラム

ナレッジパートナー:須知 義弘


前回は、リスク(危険)の種類として、Credit Risk(信用危険)とPolitical Risk(非常危険)について説明した。信用危険とは、相手方の財務状況の悪化など相手方の責により債務不履行が起こることであり、非常危険とは、為替交換の制限など相手方の責によらない債務不履行であった。

もう一つのリスク(危険)の大きな括りとして、船積前(または出荷前、積出前)リスクと船積後(または出荷後、積出後)リスクがある。船積前リスクとは、貿易の相手先国の非常危険や相手先の信用危険により、商品を船積(または出荷、積出)できないことを指す。たとえば、ある日本の会社Xが、取引先Yから大型機械を受注し生産を開始したものの、取引先Yが所在するZ国で内戦が起こり商品の出荷ができなかったり、また取引先Yが法的倒産することにより出荷ができない場合がこれにあたる。また若干特殊なケースとして、保険の対象となっている契約の相手方からの一方的なキャンセルがある。通常このカバーは相手方が公的機関の場合に限られるが、相手方が民間企業の場合でも提供している保険会社がある。船積前でカバーされる損失は、この商品を製造するためにかかったコスト(原材料費、人件費等)であり、その商品(一部の部品も含めて)が第三者に転売できた場合は、その金額は控除される。一方船積後リスクとは、商品を船積(または出荷、積出)した後、信用危険または非常危険により代金を回収できないことを指し、カバーされる損失は、通常、対象となっている契約書上の契約金額である。

さて、前回、CF、CR、NT、PRなどの民間の貿易保険の種類についても解説した。ここで、各保険会社がどのような種類の保険をいくらまで、何年提供できるかと例示しよう。各保険会社は、リミット(1案件あたりいくらまで引き受けることができるか)やテナー(1案件あたり何年まで引き受けることができるか)を、CF、CR、NT、PRという種類毎に決めている。例として、以下の表を参照いただきたい。

たとえば保険会社AはCFにおいて最大25百万ドル、最長10年のカバーを提供できるが、NTについてはカバーの提供ができない。また、保険会社EはCRにおいてカバーの提供ができず、NTにおいても民間が相手先だとカバーの提供ができない(NTのテナーの10/0は相手先が公的な機関であれば10年まで提供できるが民間だとカバーの提供ができないことを意味している)。おしなべて言うと、各保険会社は、PRにおいて一番大きなリミットかつ長いテナーを提供でき、その次に大きく長いカバーを提供できるのがCFである。CRとNTについては各保険会社の引受方針が現れ、民間企業の中長期の信用リスクまで踏み込んで引き受ける保険会社がある一方、Non-Tradeのリスクをより好む保険会社もある。(具体的にどの保険会社がいくらまで、また何年のカバーまで提供できるかを含む実際のマーケット状況については弊社が資料をまとめているのでお問合せいただきたい。(※))

尚、リミットの金額、テナーの年数は、あくまで各々の保険種類における最大の金額、最長の年数であり、すべての案件に対して必ずしもこのレベルまで提供できるわけではない。

次回は、民間の貿易保険ではそもそもどのような事象が起きたときに保険金が払われるのかを順次みていく。

(※)資料に関するお問合わせ先
マーシュブローカージャパン株式会社
E-mail:Jp.info-MBJ@marsh.com

須知義弘

*アイキャッチ Photo by Ken Yam on Unsplash

【バックナンバー】
【コラム】第2回 民間の貿易保険(取引信用保険、ポリティカルリスク保険、ストラクチャードクレジット保険)の活用について(2)
【コラム】第1回 民間の貿易保険(取引信用保険、ポリティカルリスク保険、ストラクチャードクレジット保険)の活用について(1)

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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