【コラム】(プロファイバンカーの視座)第27回 PF組成しやすい事業(13)「資源型」「電力型」の例外

2019.05.09 連載コラム

ナレッジパートナー:井上 義明


プロジェクトファイナンスとして組成しやすい事業というのは「資源型」事業か「電力型」事業のいずれかに分かれる。実務家はこういうふうに理解しておいて、おおよそ間違いはない。事業主(借主)の立場から言うと、もしプロジェクトファイナンスで資金調達を試みるのであれば、自身の事業が「資源型」事業か「電力型」事業かのいずれかに当てはまるのかどうかを予め確認しておく必要がある。レンダーの立場から言うと、いずれの「型」にも該当しない事業だとすると、その事業はそもそもプロジェクトファイナンスを組成するのは困難なのだということを早期に知っておくのは有益である。

さて、プロジェクトファイナンスとして組成しやすい事業というのは「資源型」事業か「電力型」事業かのいずれかであるというのは、これはもちろん原則に過ぎない。原則には必ず例外がある。ここでいう例外とは、「資源型」事業でも「電力型」事業でもないがプロジェクトファイナンスが組成しやすい、あるいは実際に組成されている、という意味である。本稿ではその例外について考えてゆきたい。現時点で例外として留意しておきたいものには、政府の既存事業の民営化と北米のマーチャント案件がある。

政府の既存事業の民営化の具体例は、例えば空港の民営化であろう。日本でも関西国際空港、伊丹空港、仙台空港、神戸空港、高松空港などが陸続とコンセッション方式で実際に民営化されている。コンセッション方式というのは、事業資産の所有権の移転は行わないが、運営だけを民間に任せようとするものである。民間は運営をする権利つまり運営権を取得する。運営権を取得するときに相応の対価の支払いが発生する。この対価の支払いのために資金調達をする必要があり、そこでプロジェクトファイナンスが利用されることが少なくない。

空港の民営化事業でプロジェクトファイナンスが組成できるのはどうしてであろうか。空港の民営化事業というのはもちろん「資源型」事業などではあり得ない。かと言って、果たして「電力型」事業になるのであろうか。コンセッション方式による空港の民営化事業では、PPP(官民連携)事業におけるAvailability Paymentのような仕組みが存在するわけでもない。従って、「電力型」事業ではない。つまり、コンセッション方式の空港民営化は、「資源型」事業でもなければ「電力型」事業でもない。

それでもプロジェクトファイナンスでの資金調達が可能なのはどうしてなのか。それは既往の事業実績があるからである。コンセッション方式の空港民営化の事例はいずれも現存する空港を対象としている。つまり、新規事業(英語でいうGreen field project)ではなく、既存事業(同Brown field project)である。既存事業には相応の事業実績のデータが存在する。そうすると、この既存のデータを基に、ある程度将来の事業収益を分析・予想することができる。これまでの「PF組成しやすい事業」の議論は、実は新規事業についての議論である。既存事業についての議論ではない。新規事業を前提に「PF組成しやすい事業」とはどんな事業なのかを見てきたものである。この点改めて確認しておきたい。

もう一つの例外は北米のマーチャント案件である。北米のマーチャント案件については「第17回PF組成しやすい事業(3)」で採り上げた。マーチャント案件は長期の電力売買契約がないので「電力型」事業には分類できない。しかしながら、ミニパームという短期の融資ではあるが、曲がりなりにも現在プロジェクトファイナンスが組成されている。従って、「資源型」でも「電力型」でもない事業だが、プロジェクトファイナンスが組成されているので、一応ここで例外として挙げておきたい。しかし、北米のマーチャント案件は例外であるというより、むしろやや異形である。なぜなら、長期のプロジェクトファイナンスは組成されることがなく、短期のミニパームのプロジェクトファイナンスしか組成されていないからである。借入金を完済できるだけの長期のプロジェクトファイナンスは組成されていないという一事に注目すれば、プロジェクトファイナンスが組成されているとは言えないかもしれない。さらに、短期のミニパームのためリファイナンスの問題を抱えており、持続性に疑問なしとしない。

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Photo by Tomas Williams on Unsplash

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