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【レポート】558橋の架け替えと25年間の維持点検を一括発注・米国ペンシルベニア州

2016.01.26 ナレッジ ハブ



✔ 州内にある小規模橋梁558の架け替え(設計・施工)と25年の維持点検を一括発注
✔ 建設会社、建設コンサルタント、維持管理会社、投資会社からなるSPCが受注総計約9億ドル
✔ 設計・施工・維持管理(25年)一括で、従来型の発注方式に比べて1橋当たり2割のコスト削減

 米国ペンシルべニア州で進行中の「早期橋梁架け替えプロジェクト(Rapid Bridge Replacement Project)」を紹介する。

 同州交通局(PennDOT)は2015年1月、プレナリー・ウォルシュ・キーストーン・パートナーズ(プレナリーグループ、ウォルシュグループ、グラナイト・コンストラクション・カンパニー、HDRエンジニアリング)と早期橋梁架け替えのPPP(Public-Private Partnership)契約を8億9900万ドルで締結した。州内にある比較的小規模の558橋が3年以内(2017年末まで)に架け替えられ、その後25年にわたって維持管理される。

  受注者の構成員であるプレナリーグループ(カナダ)とウォルシュグループ(米国)は総合インフラ事業会社、グラナイト・コンストラクション・カンパニー(米国)は建設会社、HDRエンジニアリング(米国)は建設コンサルタント会社である。グループ内の企業も含めて、各社が資金調達、設計、建設、維持管理の役割を分担する(図-1)。ウォルシュグループでは、ウォルシュ・インベスターズが資金調達、ウォルシュ・コンストラクション・カンパニーが建設工事、ウォルシュ・インフラストラクチャ・マネジメントが維持管理を担う。チームには11社の地元専門工事会社も含まれている。

01(図-1 橋梁の架け替えプロジェクト参加企業の役割)

  ペンシルベニア州交通局は、旧来の調達法による設計・建設・維持管理だと1橋当たり平均200万ドル以上掛かるのに対し、今回の一括契約だと平均160万ドルにコスト削減できるとしている。

  元々、同州の構造的欠陥(Structural Deficient)橋の比率は、米国全州平均の7.3%に対して、18%(約6000橋)と高かった。現在、4200橋にまで減少しており、そのうち、築年数、橋長、車線数、交通量、環境への影響等を考慮して、比較的小規模(単径間で全2車線)の2000橋を架け替えの優先候補に選んでいる。架け替えはその多くが旧来の設計・入札・施工によるものであるが、比較的小規模で設計・製作(大量生産)・施工が標準的で急速施工が可能な558橋を一括して、今回のPPPによる調達に掛けている。

  ペンシルベニア州交通局は、道路運営と日常の堆積土の除去、除雪、除草などの維持管理は自ら実施する。一般的に、適正に設計・施工された橋梁は築25~35年は大きな維持管理費は掛からない。受注者にLCC(ライフサイクルコスト)最小を保証させるため、25年の維持管理契約が付いており、受注者は全国橋梁点検基準(National Bridge Inspection Standards=NBIS)に準じた点検を実施し、州交通局が監査することになっている。

事業の概要                                                                                                                      

項目事業内容、担当企業
事業名ペンシルベニア早期橋梁架け替えプロジェクト
(Pennsylvania Rapid Bridge Replacement Project)
発注者米国ペンシルベニア州交通局
受注者プレナリー・ウォルシュ・キーストーン・パートナーズ
(構成員:プレナリーグループ、ウォルシュグループ、グラナイト・コンストラクション・カンパニー、HDRエンジニアリング)
事業内容/期間州内の558橋を3年以内(2017年末まで)に架け替えて、25年間の維持管理(点検)
/2015~2043年
事業類型DBFM(設計・建設・資金・維持管理)、アベイラビリティ・ペイメント方式
事業費事業費11億1900万ドル(設計・建設:8億9900万ドル)
資金調達
(建設時)
PAB(7億2150万ドル)、出資(5940万ドル)、初期・出来高払い(2億2470万ドル)、アベイラビリティ・ペイメント(3580万ドル)ほか
資金調達
 (長期マネジメント)
プレナリーグループUSA(80%)、ウォルシュ・インベスターズ(20%)
建設工事ウォルシュ・コンストラクション・カンパニー、グラナイト・コンストラクション・カンパニー
設計HDRエンジニアリング、HNTB
維持管理ウォルシュ・インフラストラクチャ・マネジメント

(*)アベイラビリティ・ペイメント:施設が利用可能(available)な状態で公共サービスが適切な水準で提供されることに対して、公共セクターから対価が支払われる方式。交通量によらないので、運営事業者が需要変動リスクを負うことはない 。
(*)PAB(Private Activity Bond):州や地方政府によって発行される免税債券。PPPのような民間事業者による開発・運営プロジェクトに利用される 。

【情報ソース/参考文献】
・米国プレナリー・コンソーシアムのホームページ
  →http://www.parapidbridges.com/
・米国連邦道路庁(FHWA)のホームページ
  →http://www.fhwa.dot.gov/ipd/project_profiles/pa_rapid_bridge.aspx
・中村裕司ほか、「インフラマネジメント最前線」、日経BP社、2015年11月
  →http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/241580.html

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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