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【レポート】(全3回)海外では一般的な「アベイラビリティ・ペイメント方式」 Part.1

2016.05.17 ナレッジ ハブ



✔ アベイラビリティ・ペイメント方式は、民間事業者(コンセッション会社)の運営・管理の
  「パフォーマンス」に対して対価が支払われるPPP方式である

✔ 同方式による支払いは需要によらないため、利用料金を財源とする料金徴収採算型に比べて、
  民間コンセッション会社にとってリスクの少ない契約ストラクチャである
✔ 民間コンセッション会社へのインセンティブが公共セクターのサービス提供の目標に合致する
  ように、適切なパフォーマンスの設定が必要になる

 米国の道路PPP(Public Private Partnership)プロジェクトにおけるコンセッション(事業運営権)方式は、建設費(新設がある場合)と事業期間中の運営・管理費を利用者の通行料金によって賄う通行料金(Real Toll)型と、公共セクターの財源(税金)によって賄うアベイラビリティ・ペイメント(Availability Payment)型、及びそれらを組み合わせた混合型に大別できる。このうち、通行料金型は民間コンセッション会社が長期の事業期間にわたって需要・歳入リスクを負うため、事業リスクも大きくなる。近年の米国の道路コンセッション事業では、アベイラビリティ・ペイメント型の採用が増加している。

 以下、米国初のアベイラビリティ・ペイメント型コンセッション方式が導入されたフロリダ州のI-595高速道路で、同州交通局の財務アドバイザーを担当したJeffrey A. Parker & Associatesのレポート等を参考に、アベイラビリティ・ペイメント方式の概要について述べる。

  アベイラビリティ・ペイメント方式は、交通需要に依存せず、運営・管理における提供サービスに対する民間コンセッション会社の「パフォーマンス」に応じて対価が支払われる方式である。利用料金だけを財源にする利用料金採算型では実現不可能なプロジェクトにとって、魅力的な資金調達法だ。英国やカナダでは、学校、病院、裁判所、道路、大量輸送機関、水関連施設等、多くのプロジェクトにアベイラビリティ・ペイメント方式が導入されている。I-595高速道路では、フロリダ州政府自身が通行料金を設定・徴収して、民間コンセッション会社には税金からアベイラビリティ・ペイメントを支払うものである。有料道路として通行料金が徴収されるものの、料金徴収の権利は民間事業者のコンセッションの一部にはなっていない。

  アベイラビリティ・ペイメントをベースにするコンセッション方式の特徴は以下である。

  1. 設計・建設・資金調達・運営・管理のリスクを民間事業者に移転する。
  2. 一般的に以下のようなプロジェクトに適する。
    ・直接の歳入を生まない。
    ・パフォーマンスや運営成果が定義しやすくモニターしやすい。
    ・公共セクターが利用料金の設定権限の保持を望む。
    ・歳入や需要の予測が難しく、運営の変更によって影響される。
    ・サービス品質が歳入の最大化より重要であり適切な目標である。
  3. 政府には支払い義務、民間コンセッション会社には報酬収受の上限が設定される。
  4. 民間コンセッション会社は需要のリスクを負わないため、資本コストにおけるリスクプレミアムが減少するが、公共セクターにとっては需要の不足や変動の影響が潜在的に残る。
  5. 民間コンセッション会社への出資者・融資者にとって公共セクターのクレジット(信用)があるため、投融資のリスクが軽減される。
  6. プロジェクトの建設・運営・管理において、民間コンセッション会社にとって利潤追求のための強い動機付けが維持される。
  7.  財源を公共セクターの支出に頼るため、支払いの一部、あるいは全体が他の政府債務に影響を受ける場合がある。

次ページ : アベイラビリティ・ペイメントを2段階で定義

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デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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