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【レポート】(全3回)曲がり角に来た米国の道路コンセッション方式 Part.3

2016.04.25 ナレッジ ハブ


シントラ率いる3事業でコンセッション会社の破産・買収

 2000年代に入って本格的な運営が始まった米国の道路コンセッション事業で、事業の買収や破綻の事例が散見されるようになってきた。

 インディアナ有料道路では、2006年にコンセッション会社(ITRCC、構成員:シントラとマッコーリー)が38億ドルで75年にわたって157マイルに及ぶ有料道路の事業運営権を取得した。しかし、交通量の低迷等によって事業採算が悪化し、2014年9月にITRCCは米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請。2015年5月に、主要年金ファンドが出資するIFMインベスターズが57億2500万ドルでITRCCの株式を取得し、残りの事業期間66年にわたって道路運営を継続していく。

 2015年11月には、米国における有料道路コンセッションの嚆矢となったシカゴスカイウェイのコンセッション会社(構成員:シントラとマッコーリー)を、カナダの年金ファンド3者が28億ドルで買収した。同道路は延長7.8マイルの有料道路で、2005年にコンセッション会社が18億3000万ドルで99年に及ぶ事業運営権を取得していた。

 さらに、2016年3月には、テキサス州SH130第5・6区間のコンセッション会社(構成員:シントラとザックリー)が米連邦破産法11条の適用を申請した。同区間は延長41マイルで、2008年にコンセッション会社がDBFOM(設計・施工・資金調達・運営・管理)事業を13億ドルで獲得した。コンセッション会社構成員による出資が2億1000万ドル、TIFIA(交通インフラ資金調達革新法)ローンが4億3000万ドル、そのほか銀行ローン6億8600万ドルが付いた。

 2012年の開通以来、交通量は増加したが、計画を大幅に下回っていた。当該区間に隣接する既存のI-35の増強を目的とするTTC-35(Trans‒Texas Corridor)の開発計画が中止になったこともあり、事業収益の増大が見込めなくなった。

 米連邦破産法の申請は事業再建のための債務返済計画の見直しを目的としている。コンセッション会社はSH130を引き続き、現行の通行料金のまま運営していく方針だ。運営権対価等、コンセッション会社からこれまでに1億4200万ドルを受領しているテキサス州は、「州や納税者がコンセッション会社の債務を負う責任はなく、州の財政にも影響はない」と表明している。

 上述した例はいずれも料金収入型の事業である。インディアナ有料道路とテキサス州SH130第5・6区間は交通量の低迷が影響した。コンセッション会社の負うリスクが大きい料金収入型事業の懸念点が表出したかたちだ。シカゴスカイウェイも含めて、ここで紹介した例は道路コンセッション事業の雄であるシントラが出資者であることも共通している。事業見直しは、個別事情によることはもちろん、インフラアセットに対する企業としての運用方針にも影響を受けているのだろう。

 シントラが出資する米国内の道路コンセッション事業は、上記以外にノース・タラント高速道路、I-635 LBJ等があり、それらはいずれも料金収入型である。道路運用という公共サービスの継続は、公共セクター側にとって至上命題だ。近年の米国の道路コンセッション事業(特に新設を含む事業)で、コンセッション会社側に多くのリスクを移転して多額の事業運営権対価を得る料金収入型から、税金を投入するサービス購入の要素を含むアベイラビリティ・ペイメント型に比重が移りつつあるのは、事業運営権対価等の受領金額は減るものの、こうした事態を見越して道路サービスの安定的継続性に対するリスク回避を既に目指していたからだとも考えられる。

【参考文献/情報ソース】

【関連記事】
(全3回)曲がり角に来た米国の道路コンセッション方式 Part.1
(全3回)曲がり角に来た米国の道路コンセッション方式 Part.2


デロイト トーマツ|インフラ・PPPアドバイザリー(IPA)
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