これまで「PF組成しやすい事業」に「資源型」事業と「電力型」事業があることを説明してきた。プロジェクトファイナンスの史実としては「資源型」事業向けのファイナンスから誕生し、後刻電力事業をはじめとする「電力型」事業へ利用されるようになった。この2つの事業の「型」はかなり異なる。

まず「資源型」事業がPF組成しやすい理由は、その資源開発事業が良質な埋蔵量を持っているからである。本テーマの第一回目「PF組成しやすい事業(1)」では、これを埋蔵量の優位性という言い方で表現した。優位性のある埋蔵量が存在するのであれば、それを事業化して採掘すれば、十分な収益が期待できる。生産物の価格は市場で上下するので収益額も上下余儀なくされるが、中長期的には十分採算が見込める。このように判断されれば、事業主は投資を決断し、レンダーはプロジェクトファイナンスの供与を決める。

「電力型」事業がPF組成しやすい理由は、比較的分かりやすい。長期のオフテイク契約があるからである。「オフテイク」という言葉は財やサービス(例えば電力)の引き取りを意味するだけだが、「電力型」事業の長期オフテイク契約ではその財やサービスの引取価格(例えば電力価格)の水準も予め合意している。従って、この長期オフテイク契約の存在によって、長期に亘って事業の安定的な収入が見込める。長期オフテイク契約の実例は、電力事業における電力売買契約(Power Purchase Agreement)、LNG船、FPSO、FSRUなどにおける傭船契約(Charter Agreement)、北米LNG事業で見られたトーリング契約(Tolling Agreement)、パイプライン事業におけるスループット契約(Through-put Agreement)などである。それぞれオフテイク契約の名称は異なるが、財やサービスを長期で引き取ること、およびその価格水準が予め決定していることが重要な共通点である。

世界のプロジェクトファイナンス市場で、「資源型」事業と「電力型」事業とが占める割合はそれぞれどのくらいであろうか。これは明確なデータが存在しないので筆者の推測であるが、「電力型」事業が3分の2以上を占めていると考えられる。例えば、トムソンロイター社が昨年(2018年)のプロジェクトファイナンス市場のデータを集計しているが(注)、同年の市場規模はUSD283Billion(約30兆円)あり、そのうち49%を電力事業が占めている。この電力事業の中には一部北米マーチャント案件のような長期オフテイク契約のないもの(従って「電力型」事業ではないもの)も含まれているが、大勢は通常の「電力型」事業であろう。さらに、上記の通り、電力事業分野ではなく石油・ガス事業分野などにも「電力型」事業は数多く存在するので、プロジェクトファイナンス市場の3分の2以上が「電力型」事業とみるのは穏当だと考えられる。残り3分の1弱が「資源型」事業および北米マーチャント案件のような、どちらにも属さない事業ではないかと推測される。

さて、「資源型」事業も「電力型」事業もPF組成しやすいとはいえ、事業のモデルは全く異なる。従って、プロジェクトファイナンスにおいてもさまざまな相違点が見られる。これから、「資源型」事業と「電力型」事業とを比較して、プロジェクトファイナンス上の両者の相違点などを見てゆくことにする。(この稿続く)

注)Global Project Finance Review Full Year 2018

プロジェクトファイナンス研究所
代表 井上義明

*アイキャッチ Elliott DayによるPixabayからの画像 

【バックナンバー】
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